HANE|愛知県稲沢市

土に触れる始まり

土に触れ、手を動かす。
陶芸との出会いから、私が気づいたこと。

The Moment of Touch

土に触った瞬間、表情が変わる

作陶は本来、作品を作るためのものです。
しかし、多くの方と土に触れる時間を過ごす中で、私はそれだけではないと感じるようになりました。

初めて工房に来られる方は、皆さん緊張した面持ちです。
それが、土に触れた瞬間に、ふっと表情がゆるみます。
「気持ちいい」——それが、皆さんの最初の反応です。

早くろくろに向かいたいと胸を躍らせる方。
上手くできるだろうかと慎重になる方。
同じ説明をしていても、土への触れ方も、力の入れ方も、人それぞれまったく違います。

多くの方の作陶を見守るうちに、私はあることに気づきました。
作陶には、その人の人となりが表れるのです。

それでも、自分の作品が形になると、皆さんの表情は同じように明るくなります。
「自分の作品ができた。」
その喜びが、そのまま晴れやかな表情になって現れる。

無心で手を動かしているとき、人は余分なことを考えていません。
その時間に何が起きているのか、私はうまく説明できません。
ただ、そういう顔をするんです。

土に触れた瞬間、
ふっと表情がゆるむ。

My First Encounter

陶芸を始めたきっかけ|多治見での陶芸体験

私と陶芸との出会いは、子離れをしなければと思い始めた40代のころ。
岐阜県多治見市での陶芸体験です。
もともと物作りが好きだった私は、誘われるがまま電動ろくろの前に座っていました。

指導してくださる方の手つきを見ていると、とても簡単そうに見えます。
ところが、いざ自分で土に触れてみると、全く思うようにいきません。
力を加減していれば土は形を変えてくれませんし、思い切って力を入れれば崩れてしまいます。

コーヒーカップを作ろうとしたものの、後日郵送されてきた作品を見てガッカリ。
到底コーヒーカップとは言えない仕上がりだったのです。
それを見たとき、どうしても納得のいく作品を作りたいという気持ちが膨れ上がりました。

Getting Started

ろくろ、電気釜、そして土が揃うまで

悔しい気持ちが消えないうちに、思い切って電動ろくろを買いに出かけると、陶芸店の方に勧められるまま、小型の電気釜まで購入してしまいました。

せっかく道具を揃えたのだから、これを機会に陶芸を趣味にしてみよう。
子離れを考えるうえでも、自分自身が夢中になれる時間を持つことは良いことかもしれない。

「さて、土はどうしよう」
とりあえず何か参考になればとクリエイターズマーケットへ出かけてみると、そこで一人の陶芸作家さんと出会いました。
私が陶芸を始めようとしていることを伝えると、土の入手方法を丁寧に教えてくださいました。

気づけば、ろくろ、電気釜、土……すべての準備が整っていました。

現在も、この電気釜で焼いています。
窯の蓋を開けたときの、あの温度と匂いは、何度経験しても慣れません。

One Year of Making

一年間、コーヒーカップだけを作り続けた

私は早速、陶芸体験で満足できなかった「コーヒーカップ」の制作を始めます。
目指した一品ができるまでは諦めない。
毎日のように作陶を続けること一年。
同じ形、同じ重さのコップが二個、三個と揃うようになりました。

次は、土の種類を変え、色やデザインの違う作品にも挑戦。
自分の考えたデザインが形になっていくことが、どんどん楽しくなっていきます。

Into Everyday Life

誰かの暮らしの中へ|雑貨店、喫茶店、引き出物

すると、雑貨店を営む方から「販売してみませんか」と声がかかりました。

「売る? 私の作品が売れるのだろうか?」
「もっと良い作品を作ってみよう」
そんな思いが、新しい作品を生み出す力になっていきました。

喫茶店のカップとして使っていただけたとき。
結婚式の引き出物に選んでいただいたとき。
そして、カップ&ソーサー100組ものご注文をいただいたとき。

自分が作ったものが、誰かの暮らしの中で役に立っている。
そのことが何よりもうれしく、言葉にできない喜びを感じました。

ただ、この頃の私は、作品を作ることが何よりの喜びであり、
土に触れることが人に何をもたらすのかということには、まだ気づいていませんでした。

Sharing the Experience

「陶芸をやってみたい」の一言から、教える側へ

そのことに気づくのは、「陶芸をやってみたい」という一人の言葉がきっかけでした。

作品を作り始めて数年、そんな人が現れました。
それまで作品を作るばかりで、人に陶芸を教えたことなどありませんでした。
しかし、思うように作れない気持ちや悔しさ、何をどのようにすれば上手くいくのかということなら、身をもって体験してきました。

「とりあえずやってみましょう。」

陶芸体験を始めてみると、希望する方は他にも現れます。
私にできることならやってみようと数人に体験していただくうちに、教えるコツのようなものが少しずつわかるようになってきました。

何より嬉しかったのは、陶芸をされる方たちが土に触れ、楽しそうにされている姿を目の当たりにしたことです。
その姿を見ているうちに、私自身も楽しくなってきました。

作品を「作る」興味は、やがて「陶芸体験をしていただく」ことへと向かいました。

Each in Their Own Way

作陶は十人十色

体験に来られる皆さんが、一様に楽しそうに過ごされる。
その笑顔に触れることが、私の喜びとなっていきました。

ある瞬間「あ、こういうことか」とコツをつかむ時が来ます。
「私にもできるかもしれない」
そう思えると、それまでの緊張がスーッと消え、自分の感覚を頼りに土と向き合えるようになります。

私は作陶を通して一つ学びました。
人は「教えられたとき」よりも、「安心していられたとき」にこそ、本来の力を発揮するということです。

土には理屈は通用しません。
思い通りにコントロールすることもできません。
土の動きに合わせ、土が動きやすくなるように力を加え、対話するように手を動かしていきます。
そこでは感覚だけが頼りになります。

作陶は十人十色。
それでも、自分の作品が形を成すと、その表情は皆さん同じ様に明るくなっていきます。

詳しいメニューと料金は土に触れる時間のページにまとめています。

Touching the Clay

土に触れ、自分の感覚に出会う。

土に触れる時間が、作品を作るだけでなく、自分自身の感覚に目を向ける時間にもなればと願っています。

A Place to Return to Yourself

土に触れ、自分と向き合う時間を。

対話と、土に触れる時間を通じて、少し立ち止まり、自分自身の感覚に目を向けてみませんか。